第32章 拉致
「っ!?なんだ!?狙撃か!?」
男が手を押さえて蹲るのと同時に
倉庫の入り口から大勢の公安捜査官が突入してきて
そこには零くんの姿もあった。
風「動くな!警察だ!
外にいたメンバーは全員取り押さえた!
大人しくしろ!」
風見さんが声を上げながらタトゥーの男を
後ろから2人がかりで取り押さえており
零くんはわたしのそばにきて拘束を解いてくれた。
「悪い、遅くなった。」
『いやいや、早いよ?
…絶対来てくれるって思ってた。』
私がそう言うと、零くんは椅子に座ったままの私を抱きしめた。
「ごめんな……また怪我させた。」
『大丈夫だよ?怪我には慣れてるし。』
「ばか。そんなのに慣れるな。」
少しの間抱きしめられて
零くんに手を借りて立ち上がり、タトゥーの男のところへ向かった。
男は両腕を後ろに回し手錠をかけられ座っていたので
私はその男の顔を目掛けて蹴り飛ばし、男は体ごと地面に倒れた。
「…おい、何してるんだ。」
『ちょっと顔を叩かれた仕返しを。』
「そうか、じゃあ僕も2、3発殴るか。」
零くんが犯人を起き上がらせると
風見さんが声を上げ零くんを止めていた。
風「何言ってるんですか!?だめですよ!?」
「…冗談だよ。」
風「…。」
風見さんは苦笑いのままタトゥーの男を連れて倉庫を出ていくと
入れ違いにライフルを待った秀一くんが入ってきた。
なんとなく分かってはいたけど
男の拳銃を狙撃で吹き飛ばしたのはやっぱり秀一くんだったんだね。
秀「美緒、無事でよかった。」
『さっきの狙撃凄かったよ!ありがとう、助けてくれて。』
秀「当たり前だろ。」
秀一くんは私の頭を撫でようと手を伸ばしてきたが
零くんが秀一くんの腕を掴み、それは阻止されていた。
「気安く美緒に触るな。」
秀「…少しくらいいいだろ?」
「だめだ。早く帰れ。」
『もう!零くんそんなに怒らないでよ。
秀……じゃなくて、
赤井さんのGPSのおかげでここまで来れたんでしょ?』
「…ちっ。」
…舌打ちしたよ、この人……。
この2人が仲良くなる日は果たしてくるのだろうか…と考えていると、公安の捜査官の1人が私達に声をかけてきた。