第32章 拉致
流石に退屈だ……。
見たかった映画は全て見てしまったし
筋トレはやり過ぎても逆効果だし…。
せめて誰かと電話できればいいけど、スマホのGPSを組織に辿られたら大変なので今はスマホも手元にない状態。
何をしようかぼーっとしながら考えていると
家のインターホンが鳴り、モニターを見てみると
カメラに向かって手を振っている葉山だった。
今日は仕事休みなのかな?と思いながら入り口の扉のロックを解除して、少ししてから再びインターホンが鳴り玄関に向かいドアを開けると、葉山が立っていた。
『どうしたの?今日は仕事休み?』
「……。」
私がそう聞いても葉山は何も喋らなかった。
何かがおかしい…
そう思っていると葉山はニヤッと笑い、
私との距離を詰めてきて私の口元にハンカチのような布を押さえつけた。
『っ!?』
これは…クロロホルム…!?
気づいた時にはもう遅くて
私は意識を失う寸前に思い出した。
さっき……右手で手を振っていた葉山……
本当の葉山は……
左利きだ……。
この男は葉山じゃない…
そう確信した後、私は意識を失った。