第32章 拉致
秀「俺たちFBIは、 美緒の両親が残したデータさえ取り返せればそれでいい。
奴らの身柄は日本の警察に任せるよ。」
「…当たり前だ。
そのデータも一旦こちらで預かって調べるからな。
お前に返すのはその後だ。」
秀「それは構わんよ。
それより組織のアジトは掴めたのか?」
「…。」
流石にそう簡単には見つからないよね。
相手は国際犯罪組織だし…
それに…
あのタトゥーを入れていた男…
あの男は野放しにしていると危険だ。
他の人に被害が出る前に早く捕まえないと…
秀「あいつらの狙いは美緒だ。
きっと何か企んでくるに違いない。
こっちはこっちで調べてみるが、早く見つけてくれると助かる。」
「お前に言われなくても分かってる。
…何か分かったら必ず報告しろ。」
零くんはそう言うと
私の腕を掴んで立ち上がり玄関に向かった。
腕を引かれながら、私は顔だけを秀一くんに向けた。
『あの、秀一くん。色々ありがとね。』
秀「気にするな。美緒の為なら何だってしてやるさ。」
秀一くんはそう言いながらタバコをふかしていて
私たちの会話を聞いていた零くんは
面白くなかったのか、私の腕をさらに強く引いた。
『ちょっと零くん!そんなに引っ張らないで!』
秀「安室くん、嫉妬深い男は嫌われるぞ?」
「…余計なお世話だ!!」
秀一くんは零くんを揶揄うのが楽しいのか笑いながら見送ってくれた。
私と零くんは工藤邸を後にして
セーフハウスであるマンションに向かった。
先程社長から住所を聞いていた零くんは
私が道案内する必要もなく、ずっと無言で運転していた。
……なんか機嫌が悪そうで話しかけづらい……。