第29章 妊娠
side 降谷
美緒と最後に会った日から
僕はまた仕事仕事の毎日。
時々美緒と電話はしてるけど
そんなに長い時間は話せていないので
そろそろ美緒の顔が見たくなってきた。
今日は警察庁に行った後
警視庁の公安部で仕事をする予定だ。
顔を見られる訳にはいかないから
上層部しか知らない秘密の通用口からいつも中に入っている。
その入り口から公安部まで直通だから
扉をくぐって中に入ってしまえば、誰にも会うことはない。
いつものように
僕がゼロだと知っているメンバーしか入れない部屋に来て仕事をしていると風見や他の部下たちが僕の周りでソワソワしていることに気づいた。
「どうした、何か報告でもあるのか?」
風「いえ!
…あの…報告ではなく、お聞きしたい事が…。」
「…?なんだ、早く言え。」
僕はコーヒーを飲みながら風見を急かすと
彼はとんでもないことを言い出した。
風「……若山さんが…
妊娠したというのは本当ですか…?」
「っ!?…ゴホッ!ゴホッ!」
妊娠、という言葉に驚き
飲んでいたコーヒーが気管に入り咽せてしまった。
風「…だ、大丈夫ですか!?」
「……ああ…。」
美緒が……妊娠?
僕でさえ知らないのに、なんで風見がそんな事を?
「風見…それはどこで仕入れた情報なんだ?」
風「警視庁内で噂になっていたのを
わたしを含め他の部下達も耳にしたんです。」
「……。生憎、僕は美緒から何も聞いていない。
その情報は確かなのか?」
風「それは分かりませんが…。
今日の昼間、若山さんが薬局で
カフェインレスのコーヒーや紅茶、サプリメントなどを買っているところを目撃した人物がいたそうです。」
それだけか…?
誰かに頼まれたって可能性もあるだろう。
風「その後、若山さんの後をこっそりつけたらしいのですが……
産婦人科の病院に入って行くのを見たそうです。」
「っ…!?」
風見の言葉は衝撃的だった。