第27章 見舞
『……んー…。ここは………病院?』
目を覚ますと薬品の匂いと白い天井が視界に入ったので
すぐに病院だと察することができた。
なんだか全身が少しズキズキするけど…
体を起こそうとしたところで
左手が握られていることに気づいた。
『零くん……。まさか一晩中握っててくれたの…?』
仕事で忙しいはずなのに、
ずっとそばにいてくれたことがすごく嬉しかった。
こんなに無防備に眠ってしまうくらい疲れているのに
わたしを助けに来てくれた零くんをとても愛おしく感じた。
少しの間
彼の寝顔を眺めていると、零くんは目を覚ました。
『…おはよ、零くん。』
「ん……、美緒、起きてたのか。」
『さっき起きた。…ありがとう、ずっと側にいてくれて。」
「気にするな。僕が美緒の側にいたかっただけだ。」
零くんはベットのリクライニング機能をリモコンで操作して
ベットの背部の位置を変えてくれた。
リモコンをベットの脇に戻すと、
傷に触れないように私を優しく抱きしめた。
「美緒が生きてて本当に良かったよ。」
『私って結構タフなんだよ?
こんな怪我もすぐ治してみせる。』
「…頼むから怪我が治るまで安静にしてろ。」
『……。善処します。』
2人で顔を見合わせて笑うと
そのままキスされそうになったが…
私のお腹が空腹による盛大な音を立ててしまい、
唇が触れ合う事はなかった。
『………お腹……すいた…。』
「ムードぶち壊しだな……。
……仕方ない、続きは退院してからにするよ。」
零くんはそう言って私から離れ、
ナースコールを押して私が目を覚ましたことを伝えた。
すぐに医者が入ってきて内診をされ、
私は頭も怪我しているため、検査をする必要があるそうで
零くんは医者が部屋に来たタイミングで
「また来るよ」と言って帰って行った。
その後、検査をしたり
包帯を取り替えてもらったりしてから食事をして
ベットに座っていると、病室のドアが叩かれる音がした。