第21章 復讐
思い出したらって……何…?
私は……何か大事なことを忘れてるの?
全然分からない……
昔のこと思い出そうとしていると
隣にいた零くんが声をかけてきた。
「あの男と…知り合いだったんですか?」
『いや……この前……
帝丹高校でコーチした時、家の前で会ったんです。
でも……それ以前にどこかで会った事があるような気がして…
全然思い出せないんですけどね。』
「そう…ですか…。」
『赤井さんって人は安室さんと知り合いって言ってましたけど
どういう関係なんですか?』
「…車まで戻りましょう。そこで話します。」
零くんは私の方を見ずにそう言って歩き出したので
私は後ろから彼を追いかけた。
さっきまでは手を繋いでいて暖かかったはずなのに
今はもう…私の手は冷え切ってしまっていた…。
車に2人で乗り込むと
零くんは何も喋らないまま車を走らせて
人気のない公園のそばに車を停めた。
「さっきの男の事だが…あいつはFBIで、
僕が現在潜入している組織に以前、同じように潜入捜査していたんだ。」
『FBI……』
なんでそんな人が私の事を知っているんだろう…
謎が深まるばかりだ。
「でもあいつは……
僕と一緒に潜入していた公安の捜査官を見殺しにした。
…その捜査官は自殺したんだが、赤井ほどの男なら
自殺するのを止める事だって出来たはずなんだ…」
そう話す零くんはすごく苦しそうで…
とても辛い出来事だったんだと伝わってきて胸が苦しくなった。
「僕は……どうしてもあの男の事は許せない。」
『…まさか……
復讐しようとか考えてないよね…?』
「殺してやりたいほど憎んでいるから…
そうなのかもな。」
『そんなのだめ!絶対やめて!!
復讐は復讐の連鎖を生むだけだよ!
お願いだから…殺したいとか考えないで…?』