第20章 密輸
『何、ホッとしてるの?
アジトの場所言わないなら抗生剤なんて打たないよ?
あ、もうすぐ3分経つね。」
残り2分であの世行き。
時計を見ながらカウントダウンをすると
男はさらに苦しくなってきたのか、命乞いをしてきた。
「や、めてくれ…よ…!!
まだ死にたく、ねぇんだ……
たの、む……頼むから、よ…助けて、くれ…!」
『じゃあ教えてくれる?アジトの場所。
これが最後のチャンスだよ。』
男は顔を伏せて悔しそうに顔を歪め
奥歯をギリギリと噛み締めているようだった。
「言う…言うか、ら……!!
○△町…、7丁目にある、廃工場だ………。
組織のリーダー……名前は知らねぇ…が……
いつも…そこにいる………」
あと1分残っていたが、男は吐いてくれた。
教えてくれた男にお礼を言い、部屋を出る為に立ち上がった。
「お…い……!
どこ、行くんだよ……!その注射…打ってけよ!
アジトの…場所…、言っただろうが!!」
『話せば打ってあげるなんて一言も言ってないけど?』
「はぁ!?ふざっけんなよ!!
騙しやがったのか!?」
『ふふふっ。大丈夫よ、
こんなの打たなくても死なないから。
あなたに打ったのは催淫剤の一種。
机に垂らした液体は、あなたに打ったのとは別の注射に入れていたただの塩酸。』
毒ではなかった事を伝えると、男は強く怒り出した。
「てめぇ…やっぱり嘘だったんじゃねぇか!」
『絶対に口を割らないっていう人ほど
話してくれる人が多いの。協力してくれてありがと。』
そう言いながら男に背を向けて出て行こうとしたが
後ろから男の苦しそうな男の息遣いが聞こえてきたので
私は再び男と向き合った。