第20章 密輸
『私があなたをこの毒で殺しても
正当防衛で処理してくれるって警察の人が約束してくれたよ?
それに……あなたがたとえ死ぬまでにアジトを言わなくても
警察は違う方法で突き止めるよ。
あなたが思ってるより警察は優秀なの。
だから心配しなくても大丈夫。』
そう…
つまりこの男はただ黙って死んでいくだけと言うことだ。
拳銃の密輸組織なんかにいる犯罪者には
相応しい最期だと思わない?
「ふざけんなよ!!
なぁ、そんな毒ほんとは打ってねぇんだろ!?
俺に吐かせる為の嘘だろ!?」
『だーかーらー…嘘じゃないって言ったでしょ?
ほら、もう1分経った。個人差あるけど
そろそろ熱出てきたんじゃない?』
腕時計を見ながらそう言うと
男は少し辛そうに顔を赤くして息も上がってきた。
「はぁ…は…ぁ……
いい加減にしろよ…この人殺しが!」
『そのセリフあなたが言う?拳銃の密輸なんかして…
その銃でどれだけの人が命を落としたか考えたことある?あなたは私に殺されても文句言えないようなことをしてきたの。
あなたのいる組織は、私のクライアントの恋人の命を奪った。
せめて最期は潔く死んで、あの世で後悔することね。』
男はだらだらと汗を流しながら
目をキョロキョロさせていて焦っているように見えた。
「や、やめろよ……
なぁ、殺さないでくれよ……!
毒なら抗生剤かなんか持ってるんだろ!?」
『おっ、鋭いね〜。
もちろん、ほら。ちゃんと持ってるよ。』
私はもう一本の注射器を男に見せた。
それを見せると、男は少しホッとした顔をしていた。