第20章 密輸
『…怖かったですよね……。
でもここは安全なのでもう大丈夫ですよ。
落ち着いて深呼吸しましょう。』
深呼吸をしている松本さんの手を握りながら
背中をさすっていると彼女は少し落ち着いてきたようだ。
「ありがとうございます…だいぶ落ち着きました。
…若山さん、すごく強いんですね。」
『一応、元警察官なんです。
相手が男だからって簡単にはやられませんよ?』
少しでも安心できるように笑顔でそう伝えると
松本さんはくすくす笑いながら
頼もしいです、と言ってくれた。
『もうすぐ警察の方がここに来ます。
あなたに色々お聞きしたいこともありますし
松本さんが知りたい事もお話しします。
もう少し待っていて下さい。』
「…はい。分かりました。」
風見さんが来てくれるまでの間に
何か飲み物でも用意しようと思い、キッチンに向かった。
お湯を沸かしている間、
社長に今の現状を電話で報告し
また何かあれば連絡しろと言われて電話を切った。
ホットコーヒーを入れて
リビングで待っている松本さんのところへ向かうとチャイムが鳴り、モニターを確認すると風見さんだった。
…さすが公安。来るのが早いね。
マンションの入り口のドアを開けて
風見さんが部屋の前まで来たところで
玄関の扉を開けて中に招き入れた。