第19章 憧憬
「じゃあみんな!
いつもと同じメニューから始めてね!」
部長さんの合図で練習を開始した。
蘭ちゃんが関東大会で優勝するだけあって
部員1人1人の技を見渡しているが
結構レベルが高いことがわかった。
蹴りの稽古をしている最中、
わたしは見ていて気になった男子部員の1人に声をかけた。
『ちょっとごめんね。
もう一回、今の蹴りを見せてもらえる?』
「あ、はい…」
目の前で蹴りの姿勢を見せてもらったけど
やはり少し問題があった。
『そのやり方だと足首を痛める可能性がある。
今も少し違和感あるんじゃない?』
「なっ!何で分かるんですか!?」
『何でって言われても……見てれば分かるよ。
足を突き出す時、痛まない角度でやってみて?』
「は、はい!!」
男子部員はわたしの前で再び
少し修正した蹴りを見せてくれた。
『うん、その角度でも問題ないから今度からはそうした方がいいね。さっきの形だと、ひょっとしたら骨にも異常が出るかもしれないから。』
「お、押忍!ありがとうございます!」
男子部員にお礼を言われて、
わたしはみんなを見渡せる位置まで戻った。
次に気になったのは女子部員の突きの形だった。
『突きの時に少し腕が下がってるね。
もう少し地面と垂直を意識してみて。』
「は、はい!」
アドバイスをすると、
さっきの男子部員と同じですぐに修正できていた。
『うんうん!
そっちの方が綺麗に見えるよ。』
「分かりました!ありがとうございます!」
帝丹高校の空手部のみんなは
礼儀正しい子ばかりで感心した。
今は交代でミット稽古を行っている様子を見てたんだけど…
武道館の入り口から視線を感じたので目を向けると
そこには私のよく知っている人達が部活の様子を見学していた。