第19章 憧憬
降谷くんに
美味しいです!、と感想を言うと笑顔で返してくれた。
降「それにしても、
美緒さんがオリンピックの選考会に出てたなんて初耳です。」
降谷くんもそのこと知らなかったんだ…。
まぁ警視庁内で誰にも話してないから当たり前か。
知ってたのは警護課にいた同僚と上司くらいだろう。
『あの時はまだ警察官だったんですけどね?
仕事が忙し過ぎてオリンピックは辞退したんですよ。』
SP時代は、夜通し警護することがしょっちゅうで
空手の練習する暇なんて全然ないし
選考会に出たのもテレビに出たのも一回きりだった。
蘭「えっ!?
美緒さん警察官だったんですか!?」
『うん…。
色々あって警察官は辞めちゃったの。
今は警護会社に勤めてるただの会社員だよ。』
出来れば辞めた原因は聞かないで欲しい…。
空気が重たくなっちゃうから……
そう思っていると
降谷くんが、女子高生2人に声をかけ
頼んだドリンクをテーブルに運んで行ったので、
それ以上突っ込まれることはなかった。
わたしはすぐに察した。
……きっと、降谷くんなりの優しさだろう。
カウンターの方に戻ってきた降谷くんに
小さい声でありがとう、とお礼を言うと
さっきと同じように優しい笑顔で返してくれた。