第13章 過去
私は走って警備部部長の部屋に向かい
ノックをして勢いよく入った。
「おぉ、若山。
今日から復帰か。あまり無理するなよ?」
『私のことはいいんです!
どうして前田さんを刺したあの男が不起訴なんですか!?
私の目の前で刺されたこと、ちゃんと証言しましたよね!?』
「それは……大臣から圧力がかかった以上
我々はそれに従わなければならない…
私の力ではどうすることもできないんだ。」
『どうしてですか…!?
前田さんも…私達も、警護対象者がどんな人であれ
身を挺して守ってきたんですよ!?
でもその警護対象者がSPを殺すなんて
絶対許されるべきことではありません!!!』
「若山…お前が許せない気持ちも分かる。
私も前田ほどの優秀な部下を死なせたあの男が憎い。」
『っ!だったら!なぜ抗議しないのですか!?』
「…仕方ないんだ!!上からの命令は絶対…。
私には……家族やお前たち部下を
守らなければならない責任がある。
もし逆らったら今の立場を失い
守ってやることができなくなる。
…分かってくれ、若山……。』