第13章 過去
大臣の息子が呆然としていると同僚が応援に駆けつけてきて
彼を取り押さえた。
私は動かない体を引きずりながら前田さんに近寄り
刺された部分を押さえ圧迫止血をした。
『前田さ…ん…しっかり…して下さい…
絶対……助かりますから!』
「い、や…たぶん…もう無理だ……っ、ごほっ……
内臓…まで…いっちまってると思う…からな…」
『喋っちゃだめです…!!
お願い……諦めないで下さい……』
「…若山、ごめん、な…。
あの大臣の、っ息子のこと……悩んでた、のに……。
っ、はぁ……気づいてやれなくて……」
『…っ!!』
「応援の要請……してきた、だろ?
急いで、来たんだが……
部下である、お前を…危険な目にあわせた…。」
『もう、いいです!お願いですから喋らないで!』
「俺はここまで、だけどよ……
お前…は、これからも……たくさん…の人を救え…。
そして、守れ…。
お前なら……俺の意思、を継いで…くれる……
信じて…る……から、な………。」
『……前田、さん………?』
わたしの大切な上司は笑いながら目を閉じて
動かなくなってしまった。