• テキストサイズ

《降谷夢》bonheur {R15}

第75章 幸甚




「若山さん、お隣の方は…」

「初めまして、彼女の夫の、降谷と申します。」

「そうでしたか、若山さん、
ご結婚なされてたんですね?」

『っ、はい…』




問いかけられて返事はしたけど
奥さんの顔が怖くて見られない…。


家族の命を奪った私に
幸せになる資格なんてない、と罵られるかも…

例え何も言われなくても、
心の中ではそう思っているのかもしれない。



…しかし、
奥さんが次に発した言葉は
私の予想とは大きくかけ離れていた。






「主人はずっと
若山さんのことを心配してたんですよ?
男性よりも強いから、"嫁の貰い手がないんじゃないのか?"って。」

『え…、ま、前田さんが…?』

「あの人、家でもよく
若山さんの事を私に話してくれてたんです。
頼りになる部下が出来たって…。
本当に嬉しそうにしてました。」


「っ…」




そんな話…、今まで全く知らなかった…。




前田さんは、優しい時もあったけど
仕事の時は厳しいことを言うことの方が多かった。


私を頼りにしてる、なんて…


亡くなる際にしか、言ってなかったのに…。




『わ、私なんて……前田さんに比べたら…
ずっと…何倍も、未熟で…
私が不甲斐なかったから……
だから前田さんはっ…』


「…。若山さん。
私は…あなたの事を恨んでなどいません。
こうして顔を合わせる事が出来たのも
嬉しく思ってるんですよ?」

『え……』


「主人は仕事が好きで
つい部下の人に厳しくしちゃって、
何人もの方が辞めて行ったと聞きました。
でも若山さんは、どんなに厳しくしても
いつも前向きで、自分について来てくれるから
危険な時は、死んでも俺が守ってやるって
意気込んでいました。
あの人がそんな風に思える部下の方が出来て…
妻の私も、すごく誇りに思っています。」


『っ……ふ、ぅ…』




奥さんの言葉を聞いた私は
涙がボロボロと洪水のように流れ出て来た。


そんな大事に思われてたことを知らなくて、
私なんかを誇りに思ってくれているのが嬉しくて…。




…前田さん、貴方の奥さんは
とても素敵な女性だったんですね。




/ 1124ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp