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《降谷夢》bonheur {R15}

第75章 幸甚




そして、翌日ーー…




私と零くんは、花屋で買った花、
そして、供えるためのお酒を抱えて、墓地にやってきた。





『お供え物買ってたら
来るの少し遅くなっちゃったね…』

「美緒がなかなか起きなかったからだろ?」

『は!?零くんが寝る前にもするから
そのせいで起きれなかったんだけど!?』

「仕方ないだろ?
美緒が僕を誘惑してくるから…」

『してない!
っていうかそんな風に言わないでよ!
前田さんに聞こえたらどうすんの!?』


「どうもしない。堂々とする。」




…もう、何を言ってもだめだな、この人には。





散々体を弄ばれた私は
未だに腰がまだ少し痛いっていうのに
零くんは元気そうでピンピンしてる…



…お願いだからもう少し
体力衰えてはくれないだろうか。





切実にそう願いながら
私達は、目的の人物のお墓に向かって歩き
もう少しで到着する時、そのお墓の前で
手を合わせている親子を視界に捉えた。





「あれ、誰かいるな…」

『うん…。っ、あ……あの人…』

「知ってる人か?」

『…前田さんの奥さんと……娘さんだよ。』




今日は、私の上司だった前田さんの月命日だから
遺族がお墓参りに来ていてもおかしくない。


前田さんの奥さんとは、前田さんの生前
何度か顔を合わせたことがあったけど…



お葬式は親族だけでやっていたから
亡くなった後に会うのは、今日が初めてだった。



少し離れた場所から、
前田さんの奥さんと娘さんを眺めていると
お祈りが終わった2人は立ち上がり
私と零くんの存在に気付いたようだった。


私の顔を見ると、奥さんは驚いているようで…

そのまま私達の方に近づいて来た。





「若山さん…ですよね?
お久しぶりです。」


『っ、はい…お久しぶり、です…』





どうしよう…

上手く口が開かなくて、言葉が出て来ない…。



ひょっとしたら、
私のせいで家族を失ったことを…憎んでいるかもしれない…




そう考えると、私は何も言えず
顔が徐々に下へ下がり、俯き状態になってしまった。






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