第75章 幸甚
『うぅっ……、零、くんっ……零くん…ッ』
「…大胆だな、こんな所で。」
『だって…、会いたかったんだもん…ッ』
「フッ、僕もだよ…
美緒にすごく会いたかったから…
だから迎えに来たんだ。」
『う〜っ…、ふぅ…ッ、』
抱きついた私を包んでくれる零くんの腕は、いつも通り温かくて…
私が泣いている理由を何も聞かず
ただただ優しく抱きしめてくれる零くん…
涙は止まることなく
洪水のように溢れ出てくるけど
私は零くんの腕の中で、泣きながら口を開いた。
『ただい、ま…、零くん…ッ、ただいま…っ』
「うん…、お疲れ様…、よく頑張ったな。」
あぁ…やっぱり零くんには敵わない。
私が欲しかった言葉を発して
かなり目立っているはずなのに、ずっと抱きしめ続けてくれている…
あまりにも優しい抱擁だから
きっと零くんには、私が今回の事件で
辛い思いをしたことが分かっているんだろう。
そんな優しい零くんが心から愛しくて…
好きすぎてどうしようもなくて…
うまく言葉にはできないから
私はしばらくの間、零くんの胸に顔を埋めて涙を流し続けていた。