第75章 幸甚
『みんな伏せて…!!っ、うわ…ッ!』
みんなに声をかけると
隣にいた諸伏警部は私の体に覆い被さり、銃弾が当たらないように守ってくれた。
林は闇雲に発砲し続け
銃声が室内に響き渡り、座席のシートやプラネタリウムの投影機が吹き飛び、ドームのスクリーンに穴が空いた。
そして、座席の間にしゃがみ込んでいた上原刑事に近づき、彼女が手に持っていた移動観測者の鍵を奪い、プラネタリウムから出て行った。
上「待ちなさい!!」
『諸伏警部…っ、林が…!』
諸「分かっています、絶対に…逃しませんよ。」
私達は伏せていた体を起き上がらせ
逃げ出した林を追いかけ、観測棟から外へ出た。
上「移動観測車に乗って逃げる気よ!」
まずい…!
車に乗られたら
雪道を走って逃げられてしまうかもしれない。
しかし、武器を持たない私が追いかけても
銃で撃たれるだけだ…
『どうすれば…』
諸「若山さん、私から少し離れて下さい。」
『え…』
諸伏警部は懐から拳銃を取り出すと
移動観測車に向かって銃弾を放ち
それは見事に的中して、移動観測車のタイヤを撃ち抜いた。
『おぉ…、いい腕してますね。』
諸「フッ、あなたに褒めて頂けるとは光栄です。」
逃走手段が無くなったと思われる林だったが
まだ諦めることはせず……
この前、子供達と一緒に見学した
ミリ派干渉計が載せられている、黄色の巨大な移動台車に乗り込んでいた。
大「高明!車だ!車を出せ!!』
諸「…若山さん、私は車で林を追います。
あなたはここにいて下さい。」
『え…!でも…っ』
諸伏警部…足を怪我してるのに運転なんて…
私が代わりに運転すると提案しようとしたが
引き止める間もなく、諸伏警部は車に向かって駆け出した。
『全くもう…!!
怪我がひどくなっても知りませんからね!?』
走り去る彼の背中に向かって声を掛けた私は
別の車に向かって走り出し
その車の後部座席に乗り込んだ。