第75章 幸甚
コ「あっ…、し、新一にいちゃんのメールに
そう書いてあったよ?」
…え、そうだっけ?
笑いながら誤魔化しているコナンくんを
不思議に思っていると、林が再びぽつりと言葉を溢し始めた。
林「真希が自殺したのは、御厨と鷲頭のせいだ。
にもかかわらず、鷲頭は司法取引をして
執行猶予を勝ち取った…。」
美「だから何?あなたは警察官よ!?」
林「あぁ、警察官だ。だから耐えたさ。
だが鷲頭は姿を消した…っ、卑劣にも
名前と顔を変えてな…」
…確かに、鷲頭は卑劣だと言われても
誰も否定はしないだろう。
しかし、先程
父親の舟久保英三さんと話している様子を思い返してみたら…
心の底から懺悔しているように見えた。
泣きながら謝罪をした鷲頭を
私達はもう……責める気は起きなかった。
俯いて肩を震わせている林を見ながら
鷲頭のことを思い出していると
林は再び言葉を絞り出した。
林「耐えて…、耐えて、耐え続けて……。
なのに、新しい司法取引で
これから鷲頭のような犯罪者がますます増える…、
真希のような…犠牲者も…」
…林の言うことには一理ある。
私だって…
新しい司法取引の話を聞いた時
上司が殺されたことを思い出したから。
慕っていた上司の前田さんを殺したあの時のような犯人がまた現れるかもしれない…
そう考えると、林の言葉を否定しきれない…
でも…
『それなら…、あなたが警察官として
犠牲者が出ないよう未然に防げばいい。』
林「!!」
『こんなことをしても
天国にいる真希さんが喜ぶとは思えな…』
林「うるさい!!黙れ…!!
これ以上はもう耐えられない!!
罪は償われるべきだ!!
人の罪をチクったら刑が軽くなるなんて
絶対に…、絶対に許さない!!
絶対にあっちゃいけない!!」
悲痛な叫びを上げた林は
振り上げた手を懐に入れた。
林「衛星のデータはまだ持ってる!!
まだ政府を脅せる!!」
『っ!!』
…林が懐から出した手には銃が握られていて
その銃は、私達や大和警部を襲った時、
そして、鮫谷警部を撃った銃と同じものだろう。