第74章 残像
零くんの心配症は今に始まった事じゃないけど
私がもし零くんの立場だったら
同じように心配して、きっと気が気じゃなくなる。
無事なのが分かっていても
顔を見るまでは安心できないはずだ。
『零くん…、怒ってる…?』
「いや、怒ってないよ。」
『本当に…?』
「強いて言えば…
美緒の傍で僕が守ってやらないから
それが少し悔しいとは思ってる。」
『っ、え…?』
「大事な妻が
僕の目の届かないところで傷ついて欲しくないんだ…。
すぐに飛んで行ける距離でもないしな。」
…いや、零くんならRX-7をぶっ飛ばして
秒で長野に来てしまう気がするよ。
そんな考えが思い浮かび
引き攣り笑いをしていると、零くんから質問が飛んできた。
「今日はもう宿にいるのか?」
『ううん。私だけじゃなくて
長野県警の大和警部も銃で襲われたから
今日は下山出来そうにないの…。
今は山中にある炭焼き小屋にみんなと一緒にいるよ。』
「そうか…。犯人の手掛かりは?」
『今のところまだ何もないんだけどさ…
零くん、ライフル弾って普通
ライフル銃でしか撃てないよね?』
「??まぁ、普通はそうだな。」
『だよね…』
「でも、過去に押収した銃の中に
様々な形状をした銃を見た事があるから
一概にそうだとは言えないんじゃないか?」
『ショットガンで、機関銃の弾を撃ったりとか?』
「そんな銃は見た事ないけどな。
まぁ、極端な例えだけど、そういうことだよ。」
…ってことは、
ある程度の小型の銃でもライフル弾を打てるのかもしれない。
形だけを見て、犯人の武器はライフルだって思ってたけど、カバーが掛けられていたし、誰も銃の形は見ていないわけだし…。
「でも意外だったよ。
まさか美緒が犯人を取り逃すなんてな?」
…む。
「やっぱり慣れていない雪の上じゃ
美緒の蹴りの威力も半減したのかな?」
…ムカッ。