第74章 残像
この銃型の音響装置みたいに
今回の事件の犯人が使っている銃も
カバーが掛かっているからといって
ライフル銃だと決めつけない方がいいのかもしれない。
見た目だけに捉われてしまうと
足元を掬われそうだな…。
ピリリーッ
『あ…』
犯人の銃について思考を巡らせていると
私のスマホが鳴り出して…
画面を見ると、そこには先程電話をしたばかりの
零くんの名前が表示されていた。
上「電話ですか?」
『はい…、でもここって圏外でしたよね?
どうして電波が…』
大「県警が小型の電波受信機を設置したんだ、
捜索中に連絡が取れねぇのは不便だからな。」
あぁ、なるほど。
大和警部の説明に納得した私は
スマホ片手に炭焼き小屋を出て
近くに誰もいない事を確認してから通話ボタンを押した。
『もしも…「美緒!!犯人に襲われたって聞いたぞ!?大丈夫なのか!?!?怪我してないよな!?」、……。』
…なんで既にその事を知ってるんだろう。
電話に出た瞬間
零くんの大きな焦り声が聞こえてきて
あまりの迫力に、私は反射的にスマホを耳から少し遠ざけた。
「美緒!!聞いてるのか!?」
『もー…、零くんちょっと落ち着いてよ…。
確かにちょっと危なかったけど、無傷だから。』
「そうか……、はぁ…、良かった…」
『心配かけてごめん…。でもどうして…』
「風見から聞いた。」
『ソウデスカ…』
…相変わらず、風見さんは私の事に関して
零くんへの報告を徹底してるようだ。
まぁ、ちゃんと報告しないと
後が怖いからなのかもしれないけど。
「美緒、長野にいる間は
絶対1人にならないようにしてくれ。」
『うーん…、できるだけそうする。』
「…聞こえなかったのか?
"絶対"って言ってるだろ。守れないなら
東京に連れ戻したっていいんだが?」
『…。はい、1人での行動は慎みます…」
「そうしてくれ。」
…圧がすごいよ、圧が。
大体どうやって無理矢理東京に連れ戻すつもりなの?
…まぁ、そんなことを尋ねても
恐ろしい答えしか返ってこないだろう。
想像するだけで、背中に冷や汗をかきそうなくらいだ。