第74章 残像

『大丈夫だよ、零くん。
確かに昔のことは…思い出したりもしたけど…
それで私が挫けるはずないって分かってるでしょ？』


「それは…まぁ…」


『私が強くいられるのは、零くんがいてくれるからだよ？
離れていても見守ってくれてるって、ちゃんと伝わってる。』


「…ん、そっか。」


『心配してくれてありがとう。
早く事件が解決するように、頑張るからね。』


「期待してる。怪我には気をつけろよ？
あと…」


『浮気なんかしません。』


「分かってるならいい。」





…既に結婚して一緒に暮らしてるのに
どうしてこの人の心配症は変わらないままなのかな。



それに、些細なことでヤキモチも妬くし
嫉妬深いところも結婚前と全然変わらない。




…まぁ、零くんが私のことを想ってくれているのが実感できるから、嬉しい気持ちにはなるんだけどね。






『私は公安の協力者として長野に来たんだよ？
浮気してる暇なんてないんだからね？』


「美緒にその気がなくても
長野にいる男達が変な気起こしたらどうするんだよ。」


『そ、そんなこと言われても…』


「ヒロの頼みじゃなかったら
すぐに東京へ戻ってくるように言うところだったよ。」


『え…？諸伏くんに頼まれたって知ってたの？』



「あぁ、風見から聞き出した。」





聞いた、じゃなくて聞き出したんだ…

…怖すぎ。




たぶん零くんのことだから
風見さんに尋問じみたことをしたか…

もしくは脅して無理矢理吐かせたんだろう。





心の中で風見さんを不憫に思っていると
電話口から優しくて甘い声が聞こえて来た。








「美緒…君が東京に帰って来たら
たくさん愛し合いたい…。」

『っっ…！！？』

「朝まで寝かすつもりないからな？」

『もうっ！！大体いつも寝かせてくれないのに
そんな宣言しなくていい！！』

「ははっ、確かにそうだな。」




…なんでこの男笑ってんの！？
私は嫌味のつもりで言ってるのに！！