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《降谷夢》bonheur {R15}

第74章 残像




『みんなと話してる時に零くんの話になって…
声聞きたくて仕方なくなっちゃってね…』

「っ、あぁ、もう……、そんな風に言われたら
今すぐ長野まで飛んで行きたくなるだろ…」




…ここで私が来て欲しいって言ったら
仕事やポアロのバイトも全部放り投げて来そうだな。



流石にそれは色んな人に迷惑が掛かるから言えないけど、黙って長野に来たことに、零くんはもう怒っていないのが
声色から察することが出来た。





『私も…零くんにすごく会いたい…』

「美緒…」

『もう誰1人、犠牲者は絶対出さない…。
犯人の思い通りになんか絶対させない。
事件が全部解決したら、堂々と零くんの元に帰るから…
待っててね?』

「…。うん…待ってるよ。…頼りにしてるからな?」

『ふふっ、お土産もちゃんと買ってくから。
じゃあ、そろそろ切るね、』

「待って、美緒。」




声が聞けたことで癒され満足したから
電話を切ろうとしたんだけど…


零くんから止められた私は
不思議に思いながら、彼が何か話し出すのを待った。






「辛くなったら、いつでも連絡して来い。」

『っ、え…?』

「風見から新たな司法制度の話は聞いてるだろ?
きっと美緒は…色々思うことがあるんじゃないかって……心配してるんだよ…。」




…さすがわたしの旦那様、鋭すぎる。




零くんの言う通り、諸伏警部と話した時や
司法取引の話を聞いた時、私は亡くなった上司の前田さんのことを思い出していた。



あの時のことは、思い出すだけで辛くて苦しくて…



未熟だった自分が許せない気持ちでいっぱいになる。




きっと零くんは、そんな私の考えてる事なんかお見通しで、私が自分のことを責めてるんじゃないかって…


過去を悔やんで、あの時のような犠牲者が出ないように
私が無茶ばかりしているんじゃないかって…


…そんな心配をしているんだろう。







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