第72章 多幸
「まぁ1番の理由は…
昔も今も美緒のことが好きだからかな。」
『っ、!?』
「普通、好きな人には優しくしたくなるだろ?」
それはそう…だけど……
面と向かって言われるとなんか恥ずかしい…
「美緒…可愛い、早く抱きたい。」
『なっ、!?急に何!?』
近くで翔が歯磨きしてるのに!!
聞こえたらどうすんのー!?
「パパーっ!自分で歯みがけたよ〜!」
…どうやら聞こえてはいなかったみたい。
「偉かったな。
ちゃんと磨けてるから見てやるからこっちおいで?」
『…じゃあ私、お風呂入ってくる。』
「ふっ…あぁ。のんびり入ってこい。」
『〜〜〜っ!!』
ニヤニヤしながら私を見ている零くんを睨みながら
私は脱衣所に向かい、言われた通りのんびり入らせてもらった。
でもお風呂に浸かっている間
頭の中にはさっき零くんに言われた言葉がぐるぐると回っていて…
そんなに長く湯船に浸かっていないにも関わらず
逆上せそうになってきたので、私は浴室を出た。
ーーー…
ルームウェアを着て髪を乾かしてからリビングに行くと
零くんは1人でソファーに座り、お茶を飲んでいた。
『あれ…?翔は?』
「もう寝たよ。
あいつらとたくさん遊んでたから疲れたんだろう。」
確かにすごいはしゃいでたし
楽しそうだったもんなぁ。
キッチンでコップに水を入れて飲んでいると
零くんはソファーから立ち上がり、私の方へ近づいて来た。
「そういえば、この花どうしたんだ?」
零くんが指さしたのは
キッチンのカウンターの花瓶に刺してある綺麗な花で…
『秀…じゃなくて赤井さんがね?送ってくれたの。』
私がそう言うと、あからさまに嫌な顔に変わった零くん。
この2人の仲の悪さはずっと変わらないままだった。