第72章 多幸
「大丈夫だよ、翔。お前は強い男の子だから。」
「でも…パパとママの方が強いもん…」
「それは仕方ないよ。
僕は翔とママの2人を守らなきゃいけないから
ずっと昔から鍛えてきたんだ。」
『ママの仕事はボディーガードでしょ?
だから私もパパと同じようにずっと昔から鍛えてきてたの。そんなに落ち込まなくてもいいんだよ?』
零くんの胸から顔をひょこっと覗かせた翔は
すでに涙は止まっていた。
「本当に…?ママ僕のことかっこわるいって思わなかった?」
『全然!翔はいつもかっこいいよ!
買い物行った時は絶対荷物持つの手伝ってくれるし
お散歩行った時も車道側を歩こうとしてくれるでしょ?
ママはそんな優しくてかっこいい翔が大好きなの。』
まぁ、車道側は流石に危ないから
いつもうまいこと言いくるめて歩かさないようにしてるんだけど
翔が私を思ってくれているのは分かってる。
松「翔、守るっつーのは力だけの問題じゃねぇんだぞ。」
萩「そうそう。敵をやっつけるだけじゃなくて
誰かが苦しんでたり、悩んでる時に支えてあげたり
力になってあげるだけでも守ってることになるよ。」
「そう…なの…?」
さすが萩原くん。
同じ親なだけあって子供の説得には慣れているようだった。
「翔…お前はお前なりの守り方をすればいいんだ。
でも、何でも聞いてやるって言ったから
今度の休みには一緒に特訓しような?」
「!!うんっ!ありがとうパパ!」
ようやく翔に笑顔が戻り、穏やかな雰囲気に包まれた。
翔の頭を嬉しそうに撫でている零くんは
まさに父親の顔、って感じですごくかっこよかった。
『じゃあママも仕事が休みの時は鍛えてあげるね!』
「やったぁ!じゃあ僕あの技がいいっ!」
諸「?あの技って…?」
「あのね!足をぐるんって回してお顔蹴るやつ!
ママはその一発だけで怖い男の人達を倒してたんだ!」
『!?』
「「「ぶっ…はははっ!!」」」
『ちょっと!みんな笑わないでよ!』
まさかみんなの前で回し蹴り教えてほしいなんて
言われるとは思わなかった…。
さすがに少し恥ずかしい。