第72章 多幸
「美緒にも早く会いたかったから…
最近お互い忙しくて顔合わせるの少なかったしな?」
『っ!?』
…相変わらず零くんはいきなり甘いことを言ってくるから
私はいつもドキドキさせられている。
『もう…!早く料理作っちゃおうよ!
みんなが来ちゃう!』
「ふっ、はいはい。」
私が照れている様子を
ニヤつきながら見ている零くんを無視し
先程の料理の続きをしたが…
もうすぐ完成というところで零くんが後ろから抱きついて来た。
「美緒は何年経っても本当に可愛いな?」
『なっ!?何言ってんの!?』
「顔を赤くして照れる姿も全然変わらなくて…
最高に可愛い。」
……零くんが甘過ぎて困る!!
『れ、れいくん…?今料理中だから…』
「もうほとんど終わっただろ?」
『っ、翔が…来ちゃうかも…』
「今はテレビに夢中だぞ、ほら。」
片付けを終えたであろう翔は
零くんの言う通りテレビの近くに座りアニメ番組を食い入るように見ていた。
「美緒…こっち向いて?」
『っ…』
言われた通りにゆっくり後ろを振り返ると
優しい目をした零くんと目が合って…
そのまま顔が近づいてきたので目を閉じかけたが…
ピンポーン
「『……。』」
「あっ!お客さんだー!!」
零くんがパッと私から離れると同時に
翔が走って玄関の方へと向かって行った。
「……もうこのパターンには飽きた。」
いや、飽きたって言われても…。
キスし損なった零くんはあからさまにムスッとしていたので
私は背伸びをして零くんの頬にちゅっ、とキスをした。
『…続きは…翔が寝てから…しようね?』
「〜〜〜っ!!」
驚いて顔を赤くした零くんを放置して
私も玄関の方へ向かい、玄関の鍵に手が届かない翔の代わりに鍵を開けると、
私と零くんの友人達がぞろぞろと顔を覗かせた。