第71章 懸命
すでに私の体はだいぶ回復したので赤ちゃんと同室で過ごしており、今日も見舞いに来てくれた零くんは嬉しそうに赤ちゃんを抱き上げている。
『ねぇ零くん。
瑞希と電話した時に聞いたんだけどさ、
みんなに病院には来るなって言ったんだって?』
「ああ。美緒の体はまだ全回復したわけじゃないし
負担にでもなったら大変だからな。」
…心配してくれるのは嬉しいけど
その分私はみんなからたくさんメールで
零くんに対する文句を言われているんだよね…。
「それに…家族3人だけの時間を邪魔されたくない。」
『ふふっ。そうだね。
たぶん退院したらみんなこの子の顔見に来そうだし。』
「だろうな…
風見にも写真を見せたんだが
直接僕の息子の顔が見たいって毎日うるさいんだよ。」
『あははっ!
風見さんって零くんのこと本当に好きなんだね!』
「…変な言い方しないでくれ。」
赤ちゃんを抱っこしながら嫌な顔をしている零くんが面白くて、1人でクスクス笑っていると零くんは眠っている赤ちゃんをベットに置いて私に近づいてきた。
『零くん…?どうしたの?』
「今度は美緒を可愛がってやりたくなった。」
『っ、え!?何言ってんの!?』
「大丈夫。キスするだけだから。」
零くんはベットに座っている私の横に座り、頬に手を伸ばしてきた。