第21章 二つ三つ
翌日は、残念ながら薄曇りだった。
眩しいような晴天を期待していたけれど、そう思い通りにはいかないなと、部屋のカーテンを開けながら考える。それでも気持ちはふわふわと、顔は半笑いのような状態が朝から続いていた。
今日は、テンゾウさんと会う約束をした日だ。
待ち合わせ場所は彼もよく知る文具店で、集合時間は昼過ぎにしてある。テンゾウさんは午前中用事があり、午後からの方が都合がよいと言っていたからだ。
家の中は静かで、自分が落ち着きなく動く音ばかりが聞こえる。板張りの廊下を、あたふたと行ったり来たり。
母は朝から居なかった。また呼び出しがあり、近くで出た病人の看護に向かったのだ。
昨日私が帰宅したときには家に居て、上機嫌な私を不思議そうな顔で眺めていた。理由を聞かれても、まだ上手く説明出来ないから、かえって良かったと思う。
朝食を手早く済ませて、家事も早めに終わらせる。
自分の部屋に戻り、衣装棚に収めてある服をすべて出して、何を着ていこうかと考えた。
授業があるときは、ほとんどが木ノ葉規定の忍装束で、紺色の長袖長ズボンの上下に、草色のベストだ。上忍の方ともなると、それぞれ動きやすいスタイルにアレンジしている人もいる。しかし私の場合は、支給されたまま着用していた。違うのは髪型くらい。
(デート…)
改めて考えて、先日の自分の言動に顔を熱くする。
(思わずお父さんのことまで話しちゃったからなぁ…結局曇りだし)
一枚の服を手に取り、妙な緊張を取り除こうと私は深く息を吐いた。
これから夏へと向かう季節で、今は初夏だった。
白いふんわりとしたブラウスに、丈の短いパンツはどうだろう。
いや、萌黄(もえぎ)色の前合わせの着物のようなデザインの、丈の長い服にサンダルを合わせたり。
それともワンピース?
鏡の前であれこれ合わせてみるも、どれも今一ピンと来ない。