第8章 卒業試験の行方
新年度が始まり、アカデミーでもまた賑やかな日々が過ぎていった。卒業試験が随時行われ、卒業生が出始める時期だ。担当していたくノ一教室の子らも、最終試験に合格し、無事下忍となった生徒が何人かいる。
春野サクラ、山中いの、日向ヒナタ。
他にも何人かの生徒が下忍となった。
もちろん男の子たちも。
秘伝忍術を扱える一族の者を始め、今年の卒業生は個性的な生徒が多いようだ。
うちはサスケ、油女シノ、犬塚キバ、奈良シカマル、秋道チョウジ。
更にたくさんの下忍が誕生している。
イルカ先生に聞いてみたところ、残念ながらナルト君は見送りになったようだ。
最終試験の分身の術で失敗してしまったらしい。
(変化の術だったらよかったのに)
少し前に見た、金髪の美人を私は思い出していた。彼の分身の術の精度は知らない。
イルカ先生は、職員室でその時の状況を説明してくれたのだが、まったく呆れたといった様子で腕を組んでいた。隣の席に腰を下ろした私は、ぷりぷりと怒るイルカ先生が何だか可笑しくて、こっそりと笑う。
「他の生徒は、三人には分身出来てたんですよ。それをアイツは…全く」
何とか出た分身一体は、ぐにゃりと床に突っ伏して使い物にはならない代物だったそうだ。
「女の子の変化はやたらと上手いのに……」
ぶつぶつとこぼすイルカ先生は、ナルト君の「おいろけの術」の被害者でもあるようで、少し頬を染めながらそう付け加えた。
「でも、分身の術って、簡単そうで結構難しいですよね。チャクラの分け方に気を配らないと、均等に姿形が現れませんし」
「それはそうなんですけどねぇ。ミズキ先生も大目に見たらどうかとは言ってましたけど、俺はやっぱり失格にしました」
残念そうにイルカ先生は溜息をついた。
「分身の術は基本中の基本です。アイツには…いや、アイツだからこそ、しっかりと実力を身に付けてから卒業してほしいんです」
真剣な思いに胸が詰まる。
大目に見て、なんて、確かに生徒本人のためには決してならない。自分の甘い見通しを、私は恥ずかしく思った。