第41章 これからも — 後編 —
テンゾウさんが通常の任務に就いたと聞いてから、半月が経った。彼は当初請け負った任務を終え、里に帰還している。
*
「お待たせしました」
「じゃあ、行こうか」
一日時間が取れるというテンゾウさんと、会う約束をしていた。家の近くまで迎えに来てくれた彼と木ノ葉茶通り商店街へと向かう。
「いらっしゃいませ~」
山中花店を訪れると、看板娘の山中さんの明るい声が聞こえた。色とりどりの花々を眺めながら、店内に入る。
「こんにちは」
「あれ?ナズナ先生じゃないですか!」
「山中さん、久しぶり。元気でやってる?」
「ええ、もちろん」
彼女は背が伸びて、随分と大人っぽくなっていた。
もともと綺麗な子だ。少女と言っても、もう大人の女性と変わらないように思えてしまう。
「先生、今日は何にします?」
ある時から、度々花を買い求めることが多くなった私は、彼女の店の常連になりつつあった。職員室の机に、自宅に、また自分の為に好きな花を一輪。
「そうね。今日はリンドウにしようかな。お墓参りに行くの」
「そうですか。お父様に、ですよね」
「うん、そうなの」
毎年決まった時期と、父に何か伝えたいことがあるとき、私はよく慰霊碑や、墓地に足を運んでいる。こうして店頭で会う山中さんには、少し父のことを話していた。
「はい、先生。いつもありがとうごさいます」
包んでもらった花を受け取り、代金を支払った。
「ありがとう。じゃあ、また」
そう言って店を出ようとすると、山中さんが私の服の裾をちょいちょいと引っ張る。
「え?何?」
首だけ後ろを向ける。すると、彼女は顔を寄せて、こそっと囁いた。先程までの店員としての完璧な対応は消えている。