第30章 大樹の根のように
その後、僕とナズナさんは甘味処で話をした。緑茶と団子をお供に、会話を続ける。手紙でお互い近況を知っているお陰で、話題に困ることもなかった。
瞬く間に時間は過ぎ、追加した団子の串が皿に増えていく。店を出る頃には、しばらく甘いものはいらないと感じるくらいだった。
「次は何にしましょうか?……さすがに甘いものはもういいですよね」
ナズナさんは、困ったように笑いながらそう言った。彼女は僕よりも甘いものが好きなはずだが、今日は少し食べ過ぎたようだ。
「あ、そうだ。私お弁当を作ってこようかな…。それを公園で食べるのもいいですよね」
「それはいいね。昼中会えるときがあったら是非」
僕たちはいつの間にか、次があるのが当たり前の関係になっていた。彼女と僕の間にある糸は、まだつながっている。彼女の不安げな顔はあれから見なくなり、連絡法を四苦八苦して考えた甲斐があったと胸を撫でおろす。
「じゃあ、また」
「はい。また手紙送りますね」
「楽しみにしてるよ」
ナズナさんを家の近くまで送る。手を振る彼女を背に、僕は一度自宅へ戻り、次の任務のための準備を進めた。