第28章 預かりもの
早朝手紙を受け取り、当日の夕方テンゾウさんと会った。気軽に過ごせる「酒酒屋」で夕食を取り、帰路につく。
自宅に連絡を送ってもらうため、彼に住所は伝えてある。だからなのか、彼は店を出てから近くまで送ると申し出てくれた。
「手紙、ありがとうごさいます。これからは私からも送りますね」
今回、テンゾウさんからきた手紙は長く、最後には彼の住所が記されていた。
中身を読むのは遅くなるかもしれないが、貴女の近況を知りたい。
そんな内容だった。
「ええ」
隣を歩くテンゾウさんは、静かに相槌を打った。
お酒を飲み、気持ちはふわふわとしている。それに嬉しいことも重なって、私は少し浮かれている。
対してテンゾウさんは、いつもにも増して無口だった。温度差を感じて、私は彼の様子を見た。下から覗き込むと、彼は目を逸らした。
「どうしたんですか?」
「いや、何でも…」
そう言って彼は立ち止まった。
「ナズナさん。僕の手紙読みましたよね」
「それはもちろん」
「…そうか、参ったな。昨日の今日だと思うと何か…」
首の後ろに片手を置いて、テンゾウさんは顔を反らしてしまった。かなり照れているようだ。
「そんな、私すごく嬉しかったのに」
「そうかな。それならいいんだけど…改めて考えると、随分なこと書いた気がして」
「手紙を送ってほしいってことですか?」
「ああ。僕の方は、いつ読めるかわからないなんて言ったのに、ってね」
はは、とテンゾウさんは笑う。
「構いませんよ。日記みたいに書いちゃいますよ。長すぎてうんざりするくらい」
冗談めかして私がそう言うと、テンゾウさんはやっとこちらを見た。
「それは、楽しみだな」
「でも…どうやって送ったらいいんですか?連絡鳥には、送り先を教える必要がありますよね」
アカデミーに来る知らせは、決まった場所に届く。各忍の里同士の連絡も、指定場所を鳥が覚えているから、滞りなく迅速に相手に渡る。それは召集についても同じで、一定の場所を鳥が旋回することで、可能になる。
「そのことなんだけど」
テンゾウさんは一つ咳払いをして言った。
「まあ、僕の家に直接来てもらってもいいんだけど…」
何気なくそう言われてドキリとする。