第6章 初仕事
『・・次の対戦相手の研究ですか?
チームYはあと確か2試合残ってましたよね…』
「はい、それもありますけど…。
潔世一という人物を徹底的に分析してました。次こそ彼を潰すために。」
『・・・・潔さんを?』
目が隠れるほど長い前髪で表情は見えづらいけど、二子さんが潔さんに対して強烈な対抗意識を持っている事が伝わってきた。
「じゃあ僕はこれで失礼します。」
『あっ、はい…』
二子さんは私の隣を通り過ぎ、静かに部屋を出て行った。
サッカー選手にしては物静かな印象だったけど、やっぱり内には熱いものを秘めてたりするんだな…。
閉まった扉を見つめながらそんな事を考える。
それにしてもーーーー、
モニターに映された選手達をじっと眺める。
いくつものカメラが彼らを様々な角度で捉え、映し出している。
それは最高の瞬間でもあり、誰かにとっては最悪な瞬間でもあるわけでーーーー。
選手の汗が画面越しでもわかるほど鮮明に映り、気付けば掃除の事なんて忘れて試合に魅入っていた。