第9章 SOS
「お疲れ様。」
『・・・谷中さん…』
口元に薄い笑みを貼り付けた谷中さんが立っていた。
「入力作業、もう終わりそう?」
『えっと…はい。もうすぐ終わります…。』
チラリ、とデスクの上の書類に目を向けながら頷くと、
谷中さんはドアに持たれ掛かり長い髪を掻き上げた。
「そ。悪いんだけど、もう一つ頼みたい事があって。
私はこれから打ち合わせに行かなきゃいけないんだけど、頼めるかしら?」
『はい。大丈夫ですけど……何でしょうか?』
「敗退した3チームの部屋にビブスとボディスーツがあるから回収して来てくれる?
選手達はもういないはずだから。
あ、ちなみに回収したのは洗濯しておいてね?」
『・・・え?選手の皆さん、もう…いないんですか…⁈』
「そーよ?脱落したら即刻退場。それがここのルールなんだから。
じゃ、頼んだわよ。」
谷中さんはそう言い残し足早に去っていく。
随分あっさりとしてるんだな……。
ここで半数近くの選手達がいなくなってしまったんだと思うと、胸が痛んだ。
・・・とりあえず、仕事だし回収しに行かなきゃ。
私は重い足取りで敗退したチームの部屋へと向かった。