第3章 可愛い彼(ヒト)
獅音だけだと言い続けているのに。
「これキスマーク、だよな……つけたの、アイツだろ?」
言われて思い返すと、はっきりと思い出された。
「これは、さっきつけられただけで、蘭とは何にもないよ。ずっと獅音だけが好きだって言ってるでしょ」
また赤くなる獅音が、私の首の赤い跡を指でなぞった。
「家族だって、言ったのは……本心じゃねぇ……。俺だって、ずっとが好きで、だけ見て来た……」
目をまっすぐ見つめられ、鼓動が早くなる。
「俺、バカだし、イケメンでもねぇし、格好悪ぃとこばっか見せてるけど、お前への気持ちだけは、絶対負けねぇ自信、あるから。誰にも渡したくねぇし、渡すつもりもねぇから」
獅音の口から紡がれる言葉に、体が熱くなって涙が溢れる。
「な、泣くなよっ……」
「ひっ、ぅ……だっ、て……獅音、家族ってっ、うぅっ、私だけがっ、好きなん、だってっ……」
「ごめんっ……ごめんなっ……。だけだから、お前だけが、好きだから……」
寝転んだまま獅音の温もりに包まれて、匂いに包まれて、こんな幸せがあっていいのだろうか。
大好きで大切な獅音が、私だけを思って、私だけを見ていてくれていた。
こんなに嬉しい事はない。
流れる涙を拭うように、獅音が私の目元にキスをする。
「、好きだ」
「獅音っ、好きっ、大好きっ……」
ふわりと笑った獅音が、ゆっくりキスをする。
何もかもが優しくて、触れるだけのキスなのに、何度も唇が重なる度に体が疼き始める。
「はぁ……獅音……」
「っ……んな、エロい声、出すなっつの……」
「また当たってるよ?」
甘えるみたいに、獅音の再び起き上がった昂りに腰を擦り付けた。
「お前っ、それやめろって……んっ……」
「……っ、ぁ……気持ちぃ、から? はぁ、可愛い……」
からかうみたいに言うと、獅音が気持ちよさそうな、でも少し悔しそうな顔をした。
「か、可愛いばっか言いやがって……どっちのが可愛いか、分からせてやるっ……」
ムキになるところも本当に可愛いんだから、困ってしまう。
獅音の唇が首筋を這うと、キツく吸われた部分が痛く痺れる。
「俺以外の男の跡なんて、付けてんなよっ……」