第3章 可愛い彼(ヒト)
快楽に弱い獅音は、何て可愛くて、愛おしいのだろう。
頭の上で喘ぐ獅音を目だけで見上げ、トロンとした表情をしてこちらを見る目と目が合う。
私の頭に手を置いて、髪を撫でられるだけでゾクゾクしてまた濡れた。
じっくり獅音を味わうように、更に硬くなる昂りを喉奥まで咥え込んで、手と舌も使って扱く。
ビクビクと体を震わせて、獅音が小さく呻く声が、我慢出来ずに段々はっきりとした喘ぎに変わってくる。
興奮した息遣いと、しゃぶる私の口から発せられるいやらしい音が静かな部屋に響いた。
「っ、はっ、はぁ、ぁっ……まっ、そんなっ、奥、まで、咥え……ンんっ、うぁっ……強く、したらっ……出ちまぅっ……」
「らして……ひーよ……んっ、んンっ……」
「マジで、やべぇっ、て……くっ、口、離っ……」
獅音の逃げる腰の後ろに両手を回して、頭を激しく動かして絶頂を促す。
切羽詰まった声が聞こえ、口の中に苦味の混じった独特な味が広がった。
荒い息を吐いて天井を見て呼吸をする獅音を見ながら、体を起こして喉を鳴らして欲を飲み干す。
美味しいものでは決してないのに、獅音のだというだけでそれは美味に変わる気がした。
「お前……まさか、飲んだのかよっ……」
「はぁ……うん、獅音のだもん……飲まないなんて選択肢はないよ」
我ながら本当に獅音の事に関しては、歪んでいると自覚している。だからこそ、普段はしない大胆な事まで出来てしまう自分がいる。
目を見開いて真っ赤になる獅音が、眉を顰めて私の両肩に手を置いた。
「お前……何でそんなに、俺なんかを……」
「私の大好きな人に、なんかって言わないでくれる? いくら本人でも、怒るよ?」
「あ、ご、ごめん……」
こんなまるで私が襲ったみたいな状況で、何の疑問もなく素直に謝るところも獅音らしい。
「ふふ、うん、素直でよろしい」
笑う私を獅音が真顔で見つめるけど、その目は私の顔ではない場所を見ていた。
「獅音? どうし……わっ!」
思い切り押し倒され、呆気に取られてしまう。
私を組み敷く獅音は、何処か不機嫌だ。
「いきなり、何っ……」
「灰谷とも、シたのかよ……」
「はぁ? 何訳分かんない事……」
突然の意味不明な質問に困惑と苛立ちが沸き上がる。