第3章 可愛い彼(ヒト)
獅音の力が抜けた隙を突いて体を起こすと、獅音の体が後ろに倒れ、逆転する。
私は獅音の体に跨って、獅音の手首を押さえつけた。
「獅音の気持ちは家族なんだよね? でも、私は違う。私は、獅音が好きだよ……。もちろん、男として」
目を開いて、真っ赤になる。
ここまで驚くとは思ってなかったから、こちらが驚いてしまう。
結構分かりやすく態度に出していたつもりだったけど、やっぱり獅音には伝わっていなかったようだ。
鈍感というか何と言うか。
「こんなに特別扱いしてるの、獅音だけなのに。気づかないとか……」
「き、嫌われてるとは思ってなかった、けどっ……お前も、その、俺を子供みたいに、扱うから、てっきり……」
「甘やかしてるって言ってくれる? 可愛い獅音を愛でてるんだよ」
「かわっ、可愛いって、何だよっ! お、男に言う言葉じゃねぇだろっ……それに、お前のが可愛いだろーがっ!」
半分ムキになるみたいに言った獅音の顔は、それはもう茹でダコのように真っ赤だ。
「ねぇ、獅音。私は、フラれたの?」
「あ? 何がだ?」
まったくこの子は。
「ほんと、獅音ってバカだよね」
「あぁっ!? お前っ、喧嘩売ってんのかっ!?」
「うん。獅音のバーカバーカ」
「こ……っんのっ!」
獅音が私の押さえつけていた手に力を入れた。
上半身を起き上がらせると、獅音の膝に私が跨る姿勢になると、ますます距離が近くなる。
停止する獅音の耳に、唇をゆっくり近づける。
「家族じゃなくて、ちゃんと女として見て、獅音……」
首に腕を絡みつけ、囁くみたいに言うと、獅音がビクリと体を跳ねさせた。
「好きだよ、獅音……好き……」
逃げる事もしない獅音の唇に、自ら口付けた。
軽く触れた唇を離すと、目の奥で驚きと別の何かが揺れた気がした。
構わず私は、また獅音の唇を味わうようにキスをして、ゆっくり啄むみたいに下唇を唇で挟んだ後、少し開いた隙間から舌を差し込んだ。
先程より更にビクリとした獅音の体に、多少力が入ったのが分かって、少し笑う。
「ンんっ……ふふふっ、ぁ……ぅんん……ンっ……はぁ……獅音……はっ……可愛ぃ……」
二人の小さな吐息と漏れる声、舌が絡まるいやらしい音に、興奮がどんどん大きくなる。