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我が先達の航海士

第4章 船乗りの休暇


ピロリロリロ、とオートロックの来客を告げる音。
「はい」
緊張しつつが出る。映像はちゃんと龍水だ。フランソワもいる。
「はっはーー!俺だ、七海龍水だ!!」
「分かったから。焦らず叫ばず、呼吸を落ちつけて入ってね」
避難訓練の『押さない駆けない走らない』の様に唱えロック解除ボタンを押す。玄関の方のインターホンが鳴ると駆けつけドアを開けた。

「ッ!!」
「うわっ!」
開けると同時に、龍水が嬉しそうに飛び付いて来た。よく懐いた子犬の様だ。図体は自分よりデカいが。扉が閉まり龍水に当たらない様に、フランソワがドアノブを持って押さえている。

「休暇の最中に大変失礼致します。様」
「いえ、フランソワさん。あの、龍水君?」
を抱き締めたままずっとスリスリしてくる龍水。先日の航海で死ぬ程会ったはずだが。五年前のセイル・トレーニングの直後、航海士の欠員では急遽オーストラリア行き鉄鉱石の外航船に乗った。その時も『もう居ないのか』と心底寂しそうにしていたらしい。は龍水の自分への執着は何処から来るのだろうと思いつつ、暑いから入れと中に入るように勧める。

「。貴様の今日の服も良いな!普段のセーラー服もだが、ワンピースの貴様もいい!あと寝間着姿も全て好きだ!!」
バッシィィイン!と指鳴らしをしつつ靴を脱いで上がる龍水。ありがとう、と照れつつ礼を言う。
「お邪魔致します、様。こちら、ささやかではありますが手土産でございます」
が季節を問わず食べる好物の豚まんである。お礼を言いつつ『551』と赤字で記された紙袋をフランソワから貰った。お土産をキッチンに置くの周囲をぐるぐると龍水が回りその姿を三百六十度から見る。そんなにいつもと違うのか?
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