第4章 船乗りの休暇
「はっはーーー!の部屋はシンプルだな。余白を楽しめていいぞ!?」
バッシィィイン!との家の居間で指鳴らしする龍水。
「で?なんで関西に留まる羽目になったんだ」
ジト目になりつつ、が目の前で胡座をかいて座る婚約者——七海龍水に問うた。
******
龍水との初航海を終えた翌朝。は自宅のベッドに寝転がり、大学の同期の友人と電話をしていた。
「時化た時がもう超絶やばかったんよ。スラミングした時におえーってみんな倒れちゃってさ」
船乗りの休暇は特殊だ。『内航船』勤務の場合は例えば三ヶ月乗船すれば下船後にひと月丸々休みが貰える。土日は関係無い。外国との航路を行く『外航船』の場合、八ヶ月間船に乗りっぱなし。その後四ヶ月の長期休暇を纏めて貰うのだ。船乗りは特権の長期休暇を上手く利用する。旅行やクルーザーで海に出たり、免許取得に語学留学。も趣味の映画鑑賞等に勤しむ。龍水からも休みを貰っており、明日はUSJで遊ぶ予定でチケットも取った。
《そりゃ大変だ。船乗りみんなが酔いに強い訳じゃないしね。練習船で前が見えないくらい時化て、船員八割バッタバッタ倒れた時レベル?》
電話の向こうの友人が冷静に返す。
「そうそれ、そんな感じ!ブリッジのみんなが死んでた様子がもうそっくりで」
は友達や家族と居る時は声のトーンが高くなり、若い十代女性のノリになる。船乗りは男性が殆ど、女性は三パーセント未満。一等航海士として上に立つうちに、自然と男っぽい口調や態度が癖になっている。