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我が先達の航海士

第1章 我が先達の航海士


が微笑ましげに見つつ、解説する。
「こういう帆船は昔の船で、今はもう海洋系学校のトレーニング用位かな。ウチの海運ぐらいだ。こんな一般向けのトレーニングしたり、帆船を今でも作れるのは」
「こんなに美しいのにか?」
残念だがな、と言うの横顔を龍水は眺めた。をよくよく見れば、切れ長の涼やかな瞳に通った鼻筋。朱の差した薄い唇。整った顔立ちの美女である。名字や周囲の扱いからして、家のご令嬢だ。家柄や容姿だけできっと縁談も来るし、何もしなくていいはずなのに航海士として働いている。

昼食時、龍水はに話しかけた。余程気に入られたんだなと他のスタッフは苦笑してそれを眺めている。
「貴様、航海士だったな。あれは国家資格を取らねばなるまい。よもやその歳で取ったのか?」
「そうだよ。飛び級してね。君は幾つ?」
七海財閥の御曹司で無く、あくまで一人の少年として接するは龍水からすれば新鮮だった。

「俺は七歳だ!貴様は?」
「へえ。私は十三歳」
はなかなか食べるのが早い。カレーが薄唇の中へ消えていくのを見ながら、ふと龍水は聞いてみた。
「貴様なら、その若さで仕事などする必要は無いだろう。何故航海士の仕事を選んだのだ?」
龍水にとって、家の仕事の詰め込みみたいな勉強は面白くない。なのに何故目の前の女人は勉強して、この若さで働くのだろう。
「簡単な話だよ。船が好きだからだ」
その一言に、これまでの人生が詰め込まれていた。そうかと龍水は呟いた。船が好き、か。そこまでの熱量を寄せられるのが羨ましい。
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