第2章 First dreamers
「で!なんでっ、僕が!航海士扱いなの!?」
一週間後。四本線の金筋が袖に入った船長服に龍水が袖を通した。ウキウキする龍水と対照的に、ひーんと涙目のSAI。彼は筆記も通り口述は『SAIだから』で龍水が勝手にパスした。と同じく航海士として乗り込む合格者二人が苦笑いする。
「SAI、気にするな。貴様は基本的にはに従えばいい!」
「そこじゃないッ!姉さんはいいけど、そこじゃないッ!普通に甲板員とかあるよねっ!?」
唇を噛みしめつつ言うSAIを周りはどんまい、と励ます。
「はっはーーー!では兄弟、いやは嫁だな。ならば家族だ!家族水入らずで初航海と行くぞ!」
良くないッ!水入りまくりだ、浸水してるッ!というSAIの叫びも虚しく。最初のメンバー達が新しき帆船、龍黎丸の前に出揃う。
「では出港するぞ!この航海計画の通り行くからな!」
今回の経路は、神戸より西方向に位置する明石から。大阪南部、阪南への航海、一泊二日。龍水が初参加したセイル・トレーニングと同じ航路である。
「はは。頼むぞ、龍水船長」
「うえっぷ……」
乗る前から吐きそうになってるSAIの肩を担ぎつつ、が笑いかけた。一緒に乗船タラップを駆け上る。料理担当の司厨長、フランソワが後に続く。
「ああ!よろしく頼むぞ、一等航海士!」
「うん、任せて 」
黒きセーラー服に身を包む龍水が、船のデッキで背後の熟練航海士に笑いかけた。も負けずに新米船長に微笑む。持ち場につき、意気揚々と海へと漕ぎ出た。それは、龍水のこれから綴られる航海日誌の最初のページを飾る瞬間だった。