第16章 体育祭本番
月島side
「王様‥一番になんてなったら僕も手抜いてられないじゃん‥」
一番を走る陸上部の奴らと同じくらい綺麗なフォームをした影山がそいつらを抜き去ってこちらに走ってくる
ほんとに何でも出来るって‥
癪に障るやつ
「ツッキィーーーー!頑張ってーーー!!」
『月島君ふぁいとーーーーっ!』
「山口うるさい‥花澄さんはじっとしてて下さい‥いつもよりも揺れが目立ちます」
『ゆれ‥?』
こんなかわいいバレー選手いたら
毎回応援がすごい事になるだろうな
きょとんと僕を見上げる花澄さんの頭を軽くぽんと撫でて
影山から襷を受け取るためにレーンに並ぶ
上がっていく周りの熱
応援の声
花澄さんの笑顔
それら全てが僕の鼓動を早くさせて
前のめりに構える
「ほんとに‥花澄さんのせいだからね‥」
今まで運動会とか、体育祭とか
本気でやった事なんか一回もなかったけど
好きな人の前ではいい格好したいって月並みの考えが浮かんできて
受け取った襷を握りしめて走り出す
影山が開いた陸上部との距離が徐々に狭まってくる
ぶっちぎりは無理でもっ‥
せめて抜かされたくはない‥っ
全力疾走で走り抜けて
息が上がり始める
前を見るといそいそとレーンに並び始める花澄さんの姿
小学生がバトンを受け取るみたいに
右手をしっかりと後ろにだして前のめりに立ったままスタンバイしている
「はっ‥可愛すぎるデショ‥っ」
こんなにしんどいはずなのに
気付けばふっと顔が緩む
「ツッキーが笑った?!!あんなしんどそうだったのにっ?!」
「月島が笑ってるっ?!今から雨降るかもしんねーぞっ!」
騒ぐ山口や日向の声が聞こえてきて
最後の力を振り絞る
『月島くんっ!!わたしもっ‥がんばるっ!』
私もって‥
僕が頑張ってる姿みてそうやって言ったのか?
そんな事を考えながら
襷を持った手を精一杯伸ばして
次の走者
花澄さんに手渡す
「頼みますっ‥」
ぱっちりと大きな目をウインクさせて走り出した