第13章 一日奥方2 【三成】
久しぶりの外。
よく晴れてうららかな日差し、梅の花がきれいに咲いている。
つい、この間まで寒かったのに。
そう、あの日も身を切るような寒さだった‥‥。
「引きこもっている間に春が近づいているのですね‥‥」
「ええ」
そこへダダダッと駆け寄る足音。
「三成様!出てこられたのですね‥‥。本当に良かった!」
それは家臣の一人。なにやら感極まった様子です。
「‥‥…心配かけて‥‥すみません」
「三成様が謝ることはありません、しばしお待ちを!」
そう言うと、ダダダッと走り去って行った。
名無し様はにこにこと笑っている。
しばらくすると、先ほどの家臣が戻ってきた。
その後ろには、私の先日の失策で負傷させた部下たちが続く。
「三成様っ!」
「‥‥怪我の具合はどうですか?本当に申し訳ない‥‥私のせいで‥‥」
その場に膝をついて謝ろうとした私を、彼らは急いで止めた。
「どうかお止めください!我々は大丈夫です!三成様が体を張って守って下さいましたから!」
「ですが、私の力が足りないばかりに‥‥」
「そのような事はありません!」
「どうかまた、我々をお連れ下さい!これからも三成様と共に戦いたいのです!」
「‥‥ありがとう‥‥」
皆、許してくれた‥‥。
そしてまた共に戦うと言ってくれた‥‥。
鉛のように固く重かった心が解けて軽くなっていく。
「三成くん‥‥」
名無し様は目を潤ませながら微笑む。
まるで自分の事のように嬉しそうなご様子。
そんな名無し様を見ると、私の心には更なる喜びが満ちてきた。
「名無し様、ありがとうございました!」
私の隣にいる名無し様にも家臣から声がかかる。
「え?私?」
「ずっと、三成様にお会いして気持ちを伝えたかったのですが、三成様はお部屋を出られず‥‥。とにかく心配だったのです」
「三成様を連れて来て下さって、ありがとうございました!」
「私は何も‥‥」
名無し様は必死に首を横に振る。
「三成様、その着物大変お似合いです。名無し様の見立てですか?」
「三成様と名無し様、何だかお似合いですね」
「何を言うのですか‥‥名無し様に失礼ですよ」
自分の頬がみるみる紅潮していくのを止められません。