第27章 五色の夜 春日山城編2 【幸村】R18
抱きしめられて眠り、やがて朝をむかえた。
「おはよ」
「おはよ…」
そうだ、まだ裸のままだった。
部屋の中はもう明るくて、一気に恥ずかしくなり慌てて襦袢を探して身につける。
「ありがとな、一緒に過ごしてくれて」
至近距離で見た幸村の笑顔は、くやしいほど眩しい。
「うん…」
私の戸惑いと恥ずかしさが、吹き飛ばされてしまいそうなほどの清々しい笑顔。
「幸村って、あったかいね」
「まあな。寒くて寝れない時はいつでも来いよ、もうすぐ春が来るけどな」
そう言って彼は、笑顔のまま私の肩をポンポンと軽く叩いた。
それは仲のいい友達にするような、とてもカジュアルな仕草。
何だかとても変な感じで、私はとりあえず曖昧な笑顔を浮かべた。
部屋まで送ってくれて、二人で廊下を歩く。
あー、どうしよう。
どんな顔していいかわからないよ…。
途中で、昨日ぶつかった廊下の角にさしかかった。
「いくら急いでたからって、いきなり飛び出すなよ、危ねーから。当たりどころ悪かったら死ぬからな」
「あ、はい」
私は半分上の空で、適当に返事をする。
「前にもあったけど、お前は周りを見ずにいきなり走り出すから、それやめろよ。ぶつかったのが俺だったからいいけど、他の奴だと余計なことに巻きこまれる可能性あるし」
心のなかでアワアワしてる私と違い、幸村は全く普通に喋ってる。
部屋に着くと、
「じゃ、朝餉でな」
いたって普通に去っていった。
そういうものなんだろうな。
でも、私のこの複雑な気持ちはどうしたらいいんだろう。