第22章 貴女を意のままに1【三成】
1つは男性術師の瞳の色に似た青灰色、
もう1つは女性術師の瞳の色に似た赤灰色。
「私たちが最初にかけた術により、この青い鈴の音で名無し様は今のような意識状態に落ち、赤い鈴の音で目覚めます」
一見、何の変哲もない普通の鈴に見える。
これを鳴らしただけで本当に彼女の意識を制御できるのだろうか。
女性術師は赤い鈴を手に取り鳴らした。
凛とした涼やかな音が響くと、驚いたことに本当に名無しはそっと瞼を開いた。
「名無し様…」
「三成くん…」
ぼんやりとした瞳に心配そうに覗き込む三成が映る。
「気分はどうですか…?」
「何だか気持ち良くて…私…眠ってたの…?」
名無しは身体を起こして、不思議そうに周りを見回した。
その時、再び鈴の音が響いた。
先程とは音の高さが違う。
青い鈴の音だった。
ふっと名無しの身体から力が抜けて倒れ込み、慌てて三成が抱きとめた。
先程までと同じように、その身体は脱力している。
(まさか、こんな事ができるなんて……)
緩んで無防備になった名無しの顔を見つめながら、目の前で起きた事がいまだ信じられなかった。
「不用意に鳴ってしまわないよう、十分注意してくださいね」
「は…はい…」
「何かご不明な点はありますか?」
不安は拭えないけれど、名無しの為にとりあえずやってみるしかない。
三成は腹をくくった。
「いえ、ありません」
赤い鈴が鳴り、名無しはまた目を覚ます。
三成に支えられながら身体を起こした。
「それでは私たちはこれで失礼します」
「1ヶ月後にまた経過を見に伺いたいのですが」
「ええ、お願いします」
狐につままれたようにキョトンとした表情で術師と三成の会話を聞く名無しに、
「もう心配ありません。名無し様は必ず元気になられますよ」
「これからも石田様に支えてもらってくださいね」
術師たちは優しい声で言った。
不思議な輝きを放つ二人の瞳。
それに吸い込まれるような感覚を覚えながら、
「はい…」
名無しは頷いた。