第14章 一日奥方3 【三成】R18
「私は何も」
「私は‥‥…名無し様が安土城へ来られてからずっと‥‥お慕いしていました」
「!!」
何?
いきなり何を言い出すんだよ。
俺はとっくに気づいてたけど‥‥。
「だけど、その想いはずっと秘めたまま大切にしよう、そう決めていました」
「‥‥」
それを聞いた名無しはどう思ってる?
ここからじゃ表情がわからない。
「今日一日、貴女が奥方になってくれて、絶望のどん底だった私の心は救われ癒された。名無し様が側にいてくれるだけで本当に幸せで、もう想いを抑えきれなくなってしまったのです」
普段の腑抜けた様子とは違う、軍議や戦場での三成のように真剣な声、そして表情。
「名無し様、好きです」
三成は繋いだままの名無しの手の甲に口づけた。
「私は家康の」
言いかけた名無しの唇は、三成の長い指で封じられた。
「わかっています。でも今日一日、今日だけは私の妻なのでしょう?だから」
三成は名無しの腕をぐいっと引き寄せ、抱き締めた。
頭に血が上った俺はすぐに出ていって引き剥がしたかった。
だけど何故か体が動かない。
震えるほどに怒りが溢れるのに、妙に冷静でもあった。
名無しの華奢な身体を包む三成は、いつもより数倍男らしく見える。
「夫婦ですから、こんな事もしていいはずですよね」
三成は熱を帯びた声で囁き、片手で名無しの顎を上げさせ、口づけをした。
「ん‥‥っ!!」
ぶん殴りたかった‥‥だけどやはり、俺はそれをできない。
血管がぶち切れそうになりながらも、息を潜めてそのまま見つめるだけ。
名無しは両手で三成の胸を押して逃れようとするが、びくともしなかった。
「そんな抵抗すら愛らしい」
「きゃっ」
小さく悲鳴を上げた名無しは、三成に抱え上げられた。
そのまま運ばれていく。
三成は壊れ物を扱うように、名無しを静かに褥に下ろした。
「名無し様。どうか今日だけ、妻として、私の愛を受け入れて下さい‥‥」
三成は神妙にそう言い、名無しの手をとって再び口づけた。