第8章 思い出(後編)
「…そっか、もう帰っちゃうんだね」
「うん、おれと親父はもっと行かなくちゃいけないところがあるから…」
出発の日、さくらんぼは朝早くなのに見送りに来てくれた
「じゃあ、これ取っておいて」
渡したのは小さな紙。真ん中に小さく星が描いてある
「これは?」
「おまじない。それを枕元に置いて寝ると私たち近いうちに会えるよ」
さくらんぼは本当に何でも知っている。こんな小さな紙きれにそんな力があるなんて、子供にとっては夢のようだ
「それにしても、結局おれはお前のこと、分からずじまいだったな」
「……………じゃあ、
ゆうま君も私の国においでよ。
何処でまた会えるか分からないけど、ゆうま君はきっと気に入ると思うよ。そしたら私の国のこと、私のことたくさん教えてあげる」
また会える。
そうだよね、また会える。
その時根拠もないのにおれはそう強く思った
「じゃあ…またね」
「待って!
………あのさ、おれ強くなるよ。いっぱいいっぱい訓練して」
「うん、うん。頑張って」
「それでさ、強くなってお前に会えた時は
おれとケッコンしよ!」
「うん、いいよ!」
「何話してたんだ?」
「親父!おれ、ぷろぽーずってやつしてきた!」
「はあ?
ははっ!お前にはまだ早い」
「早くないもん!絶対やってみせる!
強くなって、大きくなって、そしたら一人で旅してあいつを探し出してもう一度会うんだ!!」
「やることがおおいなw」
<ユーマ、
大人になったな>
その時のレプリカの言葉が素直にうれしかった
夜のブランコであの小さな紙を、じっと見つめる。我ながら馬鹿な事をした。あいつがそんな子供みたいなこと、覚えているはずがないのに…
迅「やっぱここにいたか。珍しいな屋上以外の場所にいるなんて」
遊真「迅さん。屋上はもともとさくらんぼの居場所だったみたいだから、お邪魔するのも如何なものかと思ったので」
迅「ほーん
メガネ君が滅茶苦茶心配してたぞ」
遊真「むう、面倒見の鬼とはいえ無断外出は申し訳ない」