第7章 思い出(中編)
怖くなった。ここはいつ戦いが起きてもおかしくない世界だ。トリオン兵がクニに侵入してくることなんて数えられない程ある。もしあの子に何かあったら…
林の中を走りながら心拍数はどんどん上がっていった
<ユーマ、こっちだ!>
レプリカがいち早く見つけたようでそちらに足を急がせる。
着いたのは庭の杭の向こう側、崖に一本だけ生えている枝に必死でしがみついていた
「さくらんぼ!なんでこんなところに!」
<逃げるのに夢中になって足を踏み外したようだ。
ユーゴを呼ぶか?>
「…いや」
そうだ、親父はいつも訓練するときに言ってた「武器は誰かを傷つけるためにあるんじゃない、自分を、大事な人を守るためにあるんだ」って
トリガーはまだ使うなって言われてるけど…
「自分の大事な人は…自分で守る!」
迷わず発動させた
戦えなくったってできることはあるはずだよ
「レプリカ、これを外れないところに引っ掛けてくれ!」
<心得た>
おれの武器はワイヤー製の刃物。これでうまく引きずり出せるかもしれない
「さくらんぼ!今ロープを下すからそれに捕まれ!」
長さはギリギリだった。さくらんぼはやむを得ず刃物の部分を触れなくてはならなかった
「うっ……」
さくらんぼが痛そうに少し悲鳴を上げた。それでも、その小さな力で武器にしがみついた
「捕まった!」
「よし、今引き上げる!もう少し頑張れ!」
無事さくらんぼを救出した。いつも使わないところを使ったし、心臓はただじゃ済まなかったし、疲れた…
「大丈夫…か…?」
「うん…何とか…」
「あ」
「?」
「タッチ」
「……あ、私たち鬼ごっこしてるんだった」
「ね」
「じゃあ私が次鬼?」
「ばか!そんなのでまだ遊べるわけないだろ!」
「大丈夫、大丈夫…おっとっと…」
「危ない…!
やっぱり心配かけるから戻ろう」
さくらんぼは渋々受け入れておれの後をついていく
「ねえ、」
抱きしめられた感触がして振り向くと、
「さっきのゆうま君凄くかっこよかった!」
ああ、これだ。心臓が絞られるようにキュッとした痛み
どうして君はおれを狂わせる言葉しか言わないんだ…