第24章 *File.24*
「あ、風見発見」
他部署から戻ると、見慣れた後ろ姿が視界に映ったから、そのまま背後から声を掛けた。
「雪乃さん、髪を切ったんですか?」
振り返って私を見下ろす細い眼が、大きく見開かれる。
「こんなに短いのは、小学校以来ぶりかな?」
「似合ってますよ。でも本当にウチに異動されたんですね」
「何か文句でも?」
「別にそういう意味では…」
「八つ当たりした、ごめん」
「…なるほど」
私と話すのを見た周囲の人間の反応を鋭く察してくれるのは、助かる。
「前々から思ってたけど、何故、私に敬語?」
「貴女の方が階級が上です」
「それだけ?」
「…雪乃さん」
風見の眼鏡の奥の細い目が、少し困ったものになった。
これでも風見の上司の嫁、だ。
「ふふっ。話は聞いてる?」
「多少なりは」
本当は、みっちりと聞かされてる。
零は過保護だ。
それにこの公安部で、私と零、私と景光のことを知っているのは、景光本人と風見だけ。
此処の上司も知らない、ハズ。
「黙っててね」
「承知してます」
「ってことで、これからも宜しく!」
「こちらこそ」
お互いにペコリと頭を下げて、挨拶を済ませた。