第22章 *File.22*
「いただきます」
手を合わせると、目の前に運ばれて来た、デミグラスソースがたっぷりかかったオムライスを食べることにした。
「食べるスピード早くない?」
「仕事中は、味わうよりも時間との勝負です」
「刑事さんって大変ー!」
「ですねー」
「でも雪乃は子供の頃からの夢を叶えたからこそ、毎日頑張ることが出来るんですよ」
「ん」
モグモグしながら、歩美ちゃん達に大きく頷いてみせた。
「それは安室さん、貴方もですか?」
「ええ」
そして、景光と高兄も。
「安室の兄ちゃんは、探偵になるのが夢だったのか?」
「探偵さんも刑事さんも、お仕事はよく似てるよねー」
『……』
元太君の言葉に、美和子がごめんと、手を合わせる。
勿論、美和子はそういう意味で聞いたのではないことは、零にもちゃんと伝わってる。
「はい。探偵というお仕事も大変なことが多いですが、色々と楽しくもありますよ」
何事もなかったかのように、元太君に説明をするところはさすがです。
「でも、いいなー」
「何がです?」
「だって、安室さんは望月刑事のお婿さんでしょ?」
「はい」
「望月刑事みたいに、カッコよくて可愛い素敵なお嫁さんをもらったんだもん!」
『……』
あれ?
褒められてる?
私が?
「…安室君、じゃなくてかね?」
思わず手を止めて顔を見合わせた大人達は、みんなそう思ったはずだ。
「歩美ね、望月刑事が大好きなの!」
「!」
満面の笑みで告白されたら、お姉さんは我慢出来ずに抱き締めちゃいますよ!
「おやおや。僕はフラれてしまいましたか」
「私も大好きですよ!歩美ちゃん」
「…ただまあ」
「うん?」
「デミグラスソースを口元に付けたまま言われても、ね」
と、横から歩美ちゃんをギュッと抱き締めた状態のまま、ティッシュで口元を拭かれた。
「!!」
自分で拭うヒマすら与えない。
「雪乃さんらしい」
「確かに」
美和子と高木が二人揃って吹き出すと、みんなが一斉に笑う。
「……」
もう、先に言ってよっ!!
と、キッと睨んで見せれば、今度はポンと頭を撫でられた。
柔らかい眼差しで、口許には笑みを浮かべて。
ホントにズルいオトコ!!
それだけで、何も言えずに降参するしかないじゃない!