第1章 始まりは唐突に【はたけカカシ】
「恋は盲目って本当にナナミのことだよね」
「…何言ってんの?」
恋は盲目なんてことわざがカカシの口から出てくる自体おかしな話だが、それ以上に文面の意味がわからない。お前のこと?私?確かにミナトさんおばかだったけど、それが今更なんだっていうんだ。
「ばかみたいに一途なところも、すぐ泣くところも、全部俺のためだったら嬉しいのにさ、お前は口を開けば先生の名前しか言わないし、聞かされる俺の気持ちにもなってよ」
あ、ナナミはばかだからわかんないか。
最後にそう付け足して、視線を逸らすカカシに、思考が停止した。本当ならば、ばかとはなんだと反抗してやりたいところだから、カカシはその前になんて言った?
”俺のためだったら嬉しいのにさ?”
”嬉しい”の一言が頭の中をぐるぐる回る。
コイツばかになった…?
訪れる沈黙に「何か言うことないの」と急かされる。何かと言われましてもね。私だって何がなんだかわからないんだわ。カカシに視線をやれば、ほんのり赤くなっている耳に、まさか、なんて良からぬことを考える。
「…カカシって私のこと好きなの?」
結局こんなことしか言えない私は本当にデリカシーのない女なんだろう。だから余計にカカシが私を好きだなんてあり得ないし、てかカカシからそんな気持ち微塵も感じなかった。
途端に思い出す「恋は盲目」というさっきの言葉。
「……」
「えっと、」
やっぱり違かったか!気まずい気まずい!自惚れ女とか言われそう!いやだ!ミナトさん助けてぇ。なんて内心焦っていると、カカシは「本当にお前はばか」と吐き捨てた。
はぁ?ばかとはなんだばかとは。さっきからばかばかうるさい。はっきり言って結論を先に言わない今日のカカシの方がばかだと思う。
「だけどそんなナナミを可愛いって思う俺の方がばかだよ」
「!?」
そう言って呆れた風に笑うカカシ。…は?今なんて言った?か、可愛い…!?予想だにしない言葉にぶわぁと顔が熱くなる。